解決…?

トントン、と身体を叩かれ、ロントスは眠りかけた意識を覚醒させる。身体を叩いた人物を見て、ため息をつく。

 

「……ジェミル」
「起こして悪いな」

 

そう言いつつもジェミルはロントスの手を掴み起き上がらせる。部屋から抜け出して、話がしたいというジェミルに、ロントスは少し嫌な顔をするが、いいよと答え、2人はヒトに見つからないように外へと出る。

 

「人界での生活はどんな感じだ?」

 

集落から少し離れた場所で星空を眺めながらそう切り出される。神界にいた時とそう変わりはない、とロントスが答えるとジェミルは少し複雑そうな顔をする。

 

「ロントスは強いな」
「どこが?最弱の神なんて笑われて、ヒトに簡単に捕まえられてしまう神だよ」

 

捕まえられただと?!と動揺するジェミルを無視してロントスは続ける。

 

「ジェミルは神界の中でも指折りの力を有する神じゃないか、僕がどれだけ頑張ったところでジェミルに追いつけっこない」
「ロントス」

 

ジェミルに名前を呼ばれるがロントスはなおも無視をして続ける。

 

「ジェミルはいつも僕の側にいて、いつもいつも比較されてきた。どこに行ってもついてくるし、君から情けの施しを受け続けて…、僕といれば優越感に浸れるかもしれないんだろうけれど、今回の役目はジェミルが居なくてもできることだ!」
「ロントス!」

 

泣きそうになりながら今までの不満をロントスは叫ぶ。それを聞いたジェミルは少し焦りながら宥めようとする。

 

「ロントス、お、落ち着いてくれ!なにかものすごい誤解をされている気がするというか誤解しているぞ!」
「誤解ってなにがだ?今回の役目で僕の隣にジェミルが居たら、結局手柄は全てジェミルのことになってしまうじゃないか!」

 

今までもそうだ、と言うロントスにジェミルは悔しそうな顔をする。どうせ今回も側にいると言うのだろう?と問うロントスにジェミルが黙って頷くと、ロントスは集落に帰ろうと走り出そうとする。ジェミルは慌ててロントスの腕をがしっと掴むと、話を聞いてくれ!と叫ぶ。

 

「俺に対する不満はたくさん言ってくれていい、でも俺の話も聞いてくれ!」

 

ムスッとした顔でロントスは、どうぞ、と言うとその場に三角座りで座り込む。ジェミルは少しホッとすると優しい口調で話し出す。

 

「まず俺はロントスと一緒にいることで優越感になんて浸っていない。俺たちは幼なじみだろう?俺はロントスの努力を知ってるし、なにも知らない奴らからの比較なんて俺だって嫌いだ、あぁ大嫌いだ!俺はただ本当に努力家のロントスが好きなだけで、服とか物をプレゼントするのも好きだから、いつも一緒にいるのは心配だから!だから今回の人界調査も危険なことに巻き込まれたらと思うと気が気じゃなくて主神レミエス様に怒鳴り込みを仕掛けたくらいだ、だから…」

 

優しい口調のわりにめちゃくちゃ早口で話すジェミルの言葉を聞いて、ロントスは慌てて止める。

 

「待った待った!主神レミエスさまに怒鳴り込みをした…???」
「あぁ、した」

 

困惑するロントスは、じゃあレミエスさまが言っていたジェミルからの報告ってそういう…?と考える。ジェミルは真剣にロントスと向き合い、真っ直ぐに好意を伝える。

 

「ロントス、俺がロントスを馬鹿にしたことがあるか?いつだって俺はロントスの味方であり続けたはずだ、しかし、それでロントスを苦しめていたなら、謝ろう…」

 

しゅんとするジェミルに、ロントスは戸惑った、しかし確かにジェミルの言う通り、馬鹿にしてきたのは他の神々であってジェミルではないことを思い出す。比較され続けたことで、認識が狂っていたと反省した。

 

「そ、その、ごめん…」

 

勝手にひとりで劣等感を持ちジェミルを嫌っていたのだなと自覚したロントスは、深々と頭を下げる。しかしジェミルは気にしておらず、寧ろめちゃくちゃ喜んだ。

 

「誤解が解けたのなら良かった!今回の役目、俺は陰ながら見守るだけだ、もし神界に帰ってそんなことをぬかす神がいたなら、俺がそいつを…」
「物騒なのはやめなよ??」

 

手をグーにして震わせるジェミルに、ロントスはあわあわしながら止める。その後、朝食時に過保護になっているジェミルと複雑そうな顔をしたロントスがいたとさ。

 

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