対抗策を考えよう

「おはよう」
「おはよー」

 

 親友に告白されてから一ヶ月ほど経った。大学で顔を合わせる時、どうすればいいかとかあれこれ考え、参考書を読み込んで身構えていたのに、いざ会ってみれば普段通りの態度に俺は拍子抜けしてしまった。

 

「(そんなこんなで高校の時と変わらない日々を過ごしているわけで……)」

 

 参考書を読み込んだことでフラグと思わしき接触を避けたり折ったりできているが、それは全て滝本以外のモノたちだ。

 

「(滝本のフラグは、あの日に折れなかったまま、どうにも、宙ぶらりんだ)」

 

 あの日の出来事を滝本は何も言わず、俺から言い出さない限りこれは話題にならないやつじゃないかと焦ってしまう。

 

「(俺から、切り出すのはなぁ……)」

 

 そもそもなんで滝本は俺の返事を聞こうとしないんだ? 普通は聞いてくるだろ? え、そうだよな? 俺なにも答えてないと思うんですけど?

 

「(うーん……)」

 

 うだうだと散らかる思考のまま授業の準備をしていれば、手元が滑って消しゴムが机から落ちそうになって滝本がすかさずキャッチする。

 

「落としたぞ」

 

 ん、といつもの仏頂面で滝本は俺に消しゴムを差し出してきたので変に意識しないように受け取れば、滝本はさらっと俺の頭を軽く撫でた。

 

「しっかりしろよ」

 

 …………いやそれ、ドジな受けに世話を焼く攻めぇ。

 

「(この前も道を歩いてたら車から俺を守るように立つし、飯食ってると何故か嬉しそうな声で「美味いか?」なんて聞いてくるし、前方から人が歩いてきたらそっと俺の肩に手を置いて引き寄せてくるし……!)」

 

 この前なんか、少し頬を赤くして俺のことを意味深な目で見ていた。

 

「(わっかりやす過ぎる……!)」

 

 寧ろなんで俺は今までそんなことに気付かなかったのだろうか? 露骨過ぎるだろ、普通に変だわ、親友に対して向けるソレじゃねぇのよ。

 

「(しかし言葉にして来ないから困る……!)」

 

 どれもこれもサッとやって終わるし、話の流れ的にそんな素振りがないため切り出すのも躊躇われる。

 

「(くそ、こうなったらそんな意味だとは思わなかったってしらばっくれるしかないか)」

 

 好きにも種類がある。俺の好きと滝本の好きの形は違いましたってオチにして、俺が彼女を作るなり巨乳が好きだとか、あの子かわいいよなとか話を振り続ければ、滝本もあの日の出来事を言い出さずにはいられなくなるだろう。

 

「(よし、それでいこう)」

 

 滝本には悪いが俺に告白できて、許されてると勘違いしてもらうぞ……。

 

「(滝本に恨みはないが、俺は絶対にBLにはなりたくないんだ)」

 

 方向性は決まったなと思った今まさに、滝本は意味深な眼差しで俺を見ていた。

 

(END)―
 主人公「(いやマジで露骨〜)」
 滝本「(今日も可愛いな……)」

 

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