神の視点
神とは圧倒的な力を持った種だ。気が付けばそうヒトに呼ばれていて、いつの間にか天に住んでいた。強力な術を使え、ヒトびとを見守っている。そういう生き物だ。
「はい、治癒し終わったよ」
「ありがとー、お兄ちゃん!」
転んですりむけた膝の怪我を、ロントスは治癒し気をつけるんだよ?と笑いかける。いつもの3人組の子供が大丈夫か?と心配するが、怪我がすっかり治ったのを見てお礼を述べる。
「気をつけるね!」
「ほら行こうぜ」
「ほんとにありがとー!」
トタトタと早足で歩き、途中で振り返ってロントスに手を振るとまた楽しそうに遊びに行った。それを見ていたバロアが嬉しそうに笑う。
「生き生きしてんなぁ、お前さん」
「そ、そうかな?」
オレらの宝を大事にしてくれてありがとな!と言われ、ロントスは気になっていたことを尋ねる。
「そういえばあの子たちはバロアの子供なのか?」
それを聞いたバロアは盛大に笑う。オレらのって言ってんだろ?とひとしきり笑うと説明をする。
「この集落の宝なんだよ、この集落ではあいつらだけなんだ、子供」
「そうなんですか…」
そういえばあの3人以外に子供は見てないな、と考えふとロジーが思い浮かぶ。
「じゃあ4番目に若いのはロジーなのか?」
「おう、そうだ」
まだまだやんちゃ坊主だぜ、と笑うバロアにつられてロントスも微笑んでいると、ジェミルが話に割って入ってきた。
「随分と楽しそうだな」
ジェミルはいっぱいのリンゴを腕で抱え、少し困り気味に息を吐く。どうしたのそれ、とロントスが唖然としていると、信仰の証にと貰った、と返ってくる。
「ここにゃ現金な奴らが多いからな、ちょいとあんま迷惑かけんなよって言ってくらぁ」
そういうとバロアはその場を離れる。ロントスはリンゴを2つ手に取ると、苦笑する。
「人界でも大人気だなジェミル」
「嬉しくない」
どの世もそんなに金が欲しいか、とげんなりするジェミルだが、悪いことではないか、とその場に座る。
小さい声でさまと言うロントスは、未だに呼び捨てにすることに抵抗を持っていた。
「厨房?なんでまた…」
「面白いらしいよ?」
レミエスの考えることがよくわからないと息を吐くジェミルとは対照的に、ロントスは目を輝かせながら手を組む。
「レミエスさまはなんだって出来ちゃうんだな、本当に素晴らしいお方だよ」
楽しそうに嬉しそうに、そんな風に話すロントスにジェミルは、まぁロントスが良いならいいか、と話を変えようとした時、背後からレミエスが話しかける。
「ロントスよ、呼び捨てで呼ぶようにと言ったはずだろう?」
「は、はい!れ、レミエス…」
レミエスに正され、恐る恐る呼び捨てにするロントスは少し照れくささと申し訳なさの間に挟まれている感じだ。厨房で何をしていたんだ?と聞くジェミルに対し、レミエスは心底楽しそうにアイラを呼ぶとスッと何かを取り出して見せる。
「これは、料理ですか?」
「ま、まさか…」
千切られた野菜と焼かれた肉がパンに挟まれた料理を、レミエスはワクワクした顔でロントスとジェミルに食べる事を期待した眼差しで見つめる。2人は顔を合わせゆっくりと手に取り口に運ぶ。
「どうだ?」
一口もぐもぐと食べた2人は、素直に感想を述べる。
「美味しいです!」
「そうか、料理とはじつに面白いな!」
ははは、と笑うレミエスの美しさにロントスが見惚れていると、ジェミルに肘で脇を小突かれる。すっかり料理にハマっている様子のレミエスにジェミルは呆れた。
「ところでワタシも作ってみたのですが」
「…どう見ても焦がした塊なのだが」
少し照れくさそうにアイラも自分で作った料理(?)を見せると、ジェミルはげっ!と顔をしかめる。しかしロントスは何一つ気にせず口に運ぶ。大丈夫か?!と心配するジェミルをよそにロントスは笑う。
「個性的ですね!」
ロントスの言葉にジェミルも警戒しつつ食べると、あまりの苦さに倒れそうになり不味い!と叫びそうになるが、ロントスが表情一つ変えずに食べきったのを見て言葉を飲み込んだ。
「レンラというヒトからもっと料理の教えを乞おう、じつに良い」
「ワタシも気が向いたらしましょう」
ははは、ふふふと笑うレミエスとアイラに対し、ジェミルは神界のトップ1と2がなにをしているんだと頭を抱えるが、ロントスは楽しそうなレミエスに見惚れる。ジェミルはヒトからもらったリンゴにかじりつき口直しをした。
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