2022-01-01から1年間の記事一覧

ウイスキーボンボンと柳くん

それは柳くんの一言から始まった。 「お、俺!___さんが食べてるチョコレート食べてみたいです!」 そう目を輝かせながら言い放った柳くんを前にして、俺は手元にあるチョコレート、ウイスキーボンボンを恐る恐る見た。 「………これを?」「はい!」 大人で…

河相くんと主人公3

例の男を見かける度に尾行し続けたぼくは、やっとその時を迎えた。そう、男が一人になった瞬間だ。 「お兄さん、ちょっといいですかぁ?」 ぼくの声に男が振り向けば、どこか迷惑そうな表情をしていてぼくはムスッとした。こんな可愛らしい子に声をかけられ…

ウイスキーボンボンと三郷くん

それは冬の終わり頃の話。三郷くんが俺の部屋に居るのが当たり前の光景になり、すっかり気を抜けるようになった。 「___さん、今日はな、ごっつええもん持ってきてん」 ニヤニヤと笑いながらゴソゴソと何かを取り出し俺の目の前に置く。 「じゃーん!どや…

河相くんと主人公2

ぼくは予想外の展開で命の危機に遭い、それを助けられた。その人物は東條先輩に付きまとう友達の兄。 「(東條先輩と比べたらなんて平々凡々な見た目…)」 泣き黒子が特徴的ではあるけれど、それだけだ。そんな人物も行動によってはまぁ、頼もしいことはあるの…

河相くんと主人公1

体育祭の閉会式に、応援団の学ランを着た生徒会長の東條先輩が、閉めの言葉を話している。 「(はぁ〜、今日もカッコいい…)」 それをぼくはうっとりと眺めている。東條先輩はカッコよくて美しくて、欠点など無いように見えて実はところどころ天然だったりする…

秀才VS綾人

とある日の休日、リビングで録画してあった番組やドラマを消化していた時のこと。家のチャイムが鳴って、オレは兄貴を呼んだ。 「兄貴ー、誰か来たー」「対応する気ゼロかよ…」 はいはい、と言って玄関に向かう兄貴。オレはそのままテレビの前に居続ける。 …

ウイスキーボンボンと旗野くん

冬の時期、ふらっと立ち寄ったデパートで実に美味しそうなウイスキーボンボンを発見し、俺は迷う事なく購入した。 「(そうだ、龍二くん用のチョコも買っとこう)」 機嫌が良いのでついつい財布の紐が緩んでしまう。まぁ、このくらい問題ないだろうと買い物…

秀才くんと主人公7

「ここが、俺の家…」 自宅を指差してそう言えば、秀才くんは何故か輝きに満ちた目で俺の家を見る。 「(着いてしまった…)」 飲み会の帰りにやらかして落ちてる人になってた俺を、秀才くんが見つけてお持ち帰りした。一線を越えてしまったか?!と思っていれば…

秀才くんと主人公6

いま俺の目の前にあるのは、実に美味しそうな、日本の朝食のお手本のような、そんな料理たち。味噌汁に鮭、ホカホカのご飯…。 「(几帳面で真面目な秀才くんの家って感じ)」 きっちりと揃えて料理を配置する秀才母に俺は頭を下げる。 「あ、ありがとうござい…

秀才くんと主人公5

頭が痛い、目を開けてぼやける視界に頭を抱える。 「(あれ、えっと、俺は、何してたっけ…?)」 確かえっと…そう、いつものメンバーで集まって、飲み会したんだ。それで…、途中からの記憶がない事に気が付いて勢いよく起き上がる。 「いっつ…っ!!」 ズキン…

大学の猫の話

俺の通ってる大学には三匹の猫が住み着いている。その内の一匹はまだ子猫だ。 「にゃあ」「なぁん」 中庭や裏庭に行くとよく遭遇するのだが、まぁ可愛いのである。 「よしよーし…」 俺の姿を見つけると猫たちが寄ってきてくれるので、ちゅるるを取り出して差…

椋木VS三郷2

学校の授業が終わり、生徒会の作業も終わろうとしていた頃。生徒会室の扉が乱暴気味に叩かれた。 「おー、邪魔するでー」「三郷くん?」 ガラッと勢いよく扉を開けたのは、なにかと生徒会長に失礼な俗物だった。この前なんか天使サマにもちょっかいを掛けて…

秀才くんと主人公4

「(学園祭の作業をしていたらもうこんな時間に…、全く椋木くんも河相くんももう少し積極的に働いてほしいものだ…!)」 そんな事を考えながら急いで帰宅している。同じ生徒会のメンバーに対して愚痴を思ってしまうが、実際はしっかり働いてくれているのは分か…

出会い

「(はぁ…、この後は接客のバイトして、その次が清掃で…、明日はえっと…)」 大学の終わりに電車を待ちながら今後の予定を確認する。俺は所謂、苦学生というやつだ。大学に進学してからまだ日は浅く、新しい環境になれず、忙しない日々を過ごしている。 「電車…

秀才くんと主人公3

俺は今、とことん厄介なフラグに頭を抱えている。数日前、東條くんへ冗談のつもりで言った「副会長からの告白」がまさに起こり、それで落ち込んでいたその"副会長"と出会い、不可抗力で手を差し伸べてしまったのだ。 「(眼鏡を踏まれてしまったから泣いたの…

写真

カタカタとキーボードの音を立て、パソコンに何かを打ち込んでいる椋木くんをベッドに寝転がりながら眺めている。真剣そう、に見えるが角度的にどんな顔をしているのかは分からない。 「(そうだ)」 ふと思い立ち、ベッドのフチに座ってスマホを椋木くんへ向…

抜け出せない主人公・東條編

「……んん?」 目を覚まし、見知らぬ天井に俺は飛び起きた。 「(ど、どこだここ?!)」 えーと、昨日は確か…、そうマサヤの家で宅飲みして、それで…途中からの記憶がない。え?お持ち帰りされたの俺?!それはマズイですよ?!と痛む頭を撫でていれば、膝が重…

抜け出せない主人公・柳編

「お邪魔します!」「いらっしゃい」 休日に遊びに来た柳くんを出迎えて、俺の部屋に招き入れる。最近はぺこぺこする事も減ってきて、慣れてきたのかなと思うことが増えた。 「あ、あの、これ前に話したオススメの漫画です!」 是非、読んでほしいです!と言…

抜け出せない主人公・椋木編

その日はいつもより早く目が覚めた。今何時だろうと思ったが、真っ暗な視界と身動きの取れない体にため息が出た。 「(……相変わらず抱き枕にされてる)」 目の前にあるのは椋木くんの胸だな、と思いながら顔を上げる。案の定、椋木くんの寝顔がそこにあった。 …

抜け出せない主人公・マヤサ編

とある休みの日に宅飲みメンバーのマサヤペアと遊びに出かけた時の話。洋司からねこみゃの記念グッズが貰えるイベントがあるらしいと聞いて、運転手を喜んで引き受けた。 「___ってホント、猫が好きだよなぁ」 呆れられつつ三人で記念グッズを貰いに行き…

抜け出せない主人公・斗真編

マサヤの家でいつもの宅飲みをしていた時のこと。マサヤペアと涼太ペアと俺の五人で飲んだりスポーツの試合を見たりして過ごし、マサヤと涼太が酔い潰れて寝落ちし始めたので、俺もそろそろ帰るかと時間を確認する。 「___、今回も帰るのか?」「あぁ、帰…

抜け出せない主人公・旗野編

龍二くんと付き合うようになって、家に頻繁に遊びにくるようになった。勉強を見てあげたり、デートに出かけたりもするが、休みの日にダラダラ過ごしたりするようにもなっていった。 「……んぅ」 そんな龍二くんが遊びに来たある日。眠い目を開けて大きくあく…

抜け出せない主人公・善照編

「(……ん、いつの間にか寝てたのか)」 休日に縁側でポカポカ陽気に当てられて、いつの間にか寝落ちしていたと気が付いた。 「(……てか、善照くんまで寝てるじゃん)」 ぼんやりとした思考で、目の前に善照くんの顔がある事に気が付く。俺と同じような姿勢で俺の…

抜け出せない主人公・水元編

それは水元の家に遊びに来た日のことだった。夜遅くまでダラダラと過ごし、休日を満喫する。 「このまま泊まってくか?」「んー、そうしようかなぁ」 明日の講義は昼からだし、ちびちびとビールを飲んでいれば水元が後ろから俺を抱きしめてきた。いや、やり…

抜け出せない主人公・加々美編

その日は夜になっても加々美が帰って来なかった。事前に遅くなるとは聞いていたが日付が変わっても帰って来ないと寂しいな、なんて思ってしまう。 「善照くん、加々美が帰ってきたらご飯あるって伝えてね」「はーい」 流石にもう寝ないといけないので善照く…

秀才くんと主人公2

現在、俺はとある高校生とカフェに居る。先日、普通に歩いていたら足元に眼鏡が滑り込むように現れ、避ける間もなく思い切り踏んづけてしまったのだ。なんだよそれ、回避不可能とか勘弁してくれ。そうしてその眼鏡の持ち主を大号泣させてしまい、それをほっ…

秀才くんと主人公1

その時の俺は酷く取り乱していた。 「あなたはずっと俺の憧れで…!だから俺はあなたに釣り合う人間になりたかった…!なのにあなたは俺を選んではくれなかった!それなら俺の人生には何の意味もない!死んでやる!!」 ずっと抱えに抱えていた生徒会長への想…

椋木VS三郷

その日は雲ひとつない快晴で、太陽の光がさんさんと照りつけていた。 「(椋木くん、黒い服ばっかだから熱が集まって…暑そうだな)」 今日みたいな日は特に、猫背で歩いているせいで顔の影が一層濃い。前見えてるのかな?なんて思ってしまう。 「……大丈夫?」…

椋木くんと主人公7

椋木くんと生活をし始めて一ヶ月が経とうとしている。早いものでもうそんなに経つのかと思いつつ、そろそろ怪我をしてる友人を理由にするのは厳しくなってきた。特に綾人からは疑いの眼差しを向けられている、具体的に言うと…。 「……なんかその匂い、学校で…

抜け出せない主人公・綾人編

夜、夕食を食べ終わり俺と綾人はテレビを観て過ごしていた。 「……」 ふと綾人が船を漕いでるのが視界の端に見え、テレビから視線を外して様子を窺ってみれば、ほぼほぼ寝ていた。 「綾人、寝るなら部屋に戻れよ」「んー…」 俺も寝るか、とテレビを消して綾人…