片想いに別れを

俺には仲の良い友達がいる。ぼやーっとして、何を考えているのか分からない無表情気味な男友達。猫を飼い始めたんだと手で大きさを教えながら嬉しそうな顔で話す友達を見て、俺は自然と口角が上がった。「(可愛いやつ)」俺はそんな友達の、___のことが好きだ。高校に入学したある時に知り合い、別のクラスだった___が三年生で同じクラスになり俺は心底喜んだ。「(今ではすっかり親友と呼べる距離感にいる)」こんな俺の気持ちなど知らずに無邪気に、楽しそうに猫の話をして携帯で写真を見せてくる___は、俺のことなど仲の良い友達だとしか思っていないだろう。「(この想いを伝えたら、どんな反応をするだろうか……)」日に日に増していく想いを隠しながら高校生活を送り、修学旅行の夜に集まって好きな子の話で盛り上がった。俺はその話題に内心焦りながら___の回答を聞いて胸が痛くなった。「俺は髪の長くて、おっぱいが大きい子だなぁー」欲望に忠実か!と他の班の男子に言われ、たははと笑う___。その顔は嘘偽りもなく、背は高くてもいいかな、可愛い子がいいな、なんて話す___。「滝本は?」「……守ってあげたくなる子」___に聞かれた俺は、苦しみ紛れにそう答えた。俺の想いを告げればあの笑顔を壊すことになるのだろうか?俺はこの関係を壊せるのだろうか?「(諦める、べきだ)」そんな言葉が浮かんでくる。心の奥底に沈めて、秘密にするんだと……。そんな想いを引き摺ったまま、俺は大学の入試合格発表の日を迎えた。「お、滝本もう来てたんだな」「おー」おはよう、早いな、もう見た?と聞いてくる___にまだ見てない、と答えればじゃあ見に行こうと俺の隣で笑う。「(……いい加減に、しないとな)」いつまでもこのままでいるべきではない。今日で終わりにするべきだと決心して俺たちは番号を見に行く。「えーっと……」俺たち以外にも番号を探している人だかりの後ろから、ここから見えるだろうか?と背伸びをして確認する___を横目に、俺も自分の番号を探した。「(…………!)」上の方に自分の番号を見つけ、合格していることを知る。しかし喜びよりも先に、俺は別のことを考えた。「(___は……どうなんだ?)」そこまで勉強が不得意、ではないがそこそこな___。これまで互いの家で勉強会をしたりもしていたが、合格してくれているのか気になって仕方がない。「あ」不意に___が声をあげ、俺は___を見れば、___が指を差しながら俺に笑った。「あったあった、滝本はどう?」無事合格してたー、といつもの笑顔をする___に俺は真っ直ぐ向き合い、___の名前を呼んだ。「___」「ん?」ここからじゃ見えない?なんて言う___に俺は言い放った。「俺は___のことが好きだ」ずっと隠していた、秘めた想いを俺は遂に吐き出した。そんな俺の言葉に___がぽかんとした顔をする。「…………」目をぱちくりとさせている___に、俺は気恥ずかしくなってしまい、___の耳元で囁いてその場から逃げ出すことにした。「大学でもよろしくな」「え、ちょ……!」名前を呼ばれても俺は止まることなく___から離れた。あぁ、言ってしまった、もう今までのような関係ではいられなくなっただろう。「(だがそれでも、終わりにするべきだ)」好きという気持ちを俺は諦められなかったんだ。親友でなくなってもいい、嫌われるかもしれない、それでもこの想いを告げて、もっと深く___と関わりたいのだ。「(もっと___に俺を知ってほしい、もっと___のことを知りたい)」もっと向き合いたいんだと、俺は一人、晴れ渡る広い空を見上げた。(END)―主人公「(親友から告られた……?え、そんな、漫画みたいなことある……??)」母親「あら___、どうしたの?難しい顔しちゃって」

 

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