酔っ払い主人公・椋木編
その日はいつものようにパソコンの前で作業をしながら、天使サマがご帰宅されるのを待っていた。
「(今日は生徒会の用事で大変だった、カミサマのお力になれたのは嬉しいが……、天使サマ、今日は少し遅いな)」
盗聴器を確認する時間もなかった為に、どうなっているのか分かっていない。不安だ、出来ることならすぐにでも場所を特定して天使サマの元へ……と、作業の手が止まった瞬間、玄関が開く音がして俺は思わず立ち上がる。
「椋木くーん、ただいまぁ!」
そして勢いよく部屋の扉が開けられ、天使サマがホワホワした顔で俺を呼んできた。
「お、おかえりなさい、てん、___さん」
一先ず無事なようで安心したが、どうやらひどく酔っ払っているようだ。誰だ、俺の天使サマをこんなになるまで飲ませたやつは……!
「椋木くん、まーたぱそこんの前にいるー」
もう、目に悪いぞ、と言って天使サマが俺のほっぺを両手で包み込んできた。
「て、天使サマ……」
赤い顔をしてご機嫌で笑顔な天使サマ、愛らしいが非常に酒臭く、その手は熱かった。
「(しくった、やはりしっかりと盗聴はするべきだったな)」
とにかく今はこれ以上、酔いが酷くならないようにしなければ、明日になって落ち込んでいる姿などできれば見たくない。
「___さん、水をお持ちします」
「みずー?」
天使サマをベッドに座らせ、キッチンに向かおうとすれば力いっぱいに腕を掴まれた。
「くーらきくん」
そして立ち上がって俺をぎゅっと抱きしめ、今度は俺のほっぺをムニムニと揉んできた。
「椋木くんは、大っきいなぁ〜」
あはは、と笑う天使サマ。
「(天使サマから、触ってもらえるのは嬉しいが……)」
早く水を飲ませないといけない。しかし天使サマの手を振り払うのは気が引ける。
「(天使サマをキッチンまで連れて行った方が早いか……)」
そう思った瞬間、グイッと引っ張られ、不意打ちを食らった俺は天使サマを押し倒すような体勢でベッドに倒れる。
「て、天使サマ……?!」
「よーしよし、お兄ちゃんが寝かせてあげるぅ」
よしよしと背中を叩かれ、いい子いい子と頭を撫でられる。
「(あ、あわわわわ……!)」
初めてのこと過ぎて俺は頭が真っ白になってしまう。え、あ、ど、どう、あわわ!
「よしよし〜」
結局、俺は固まったまま天使サマが眠りにつくまで困惑し続けた。
(END)―
椋木「…………あんなこと俺以外にはしないでください」
主人公「は、はい(酒を飲むなとは言わないんだな)」
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