河相くんと主人公2

ぼくは予想外の展開で命の危機に遭い、それを助けられた。その人物は東條先輩に付きまとう友達の兄。

 

「(東條先輩と比べたらなんて平々凡々な見た目…)」

 

泣き黒子が特徴的ではあるけれど、それだけだ。そんな人物も行動によってはまぁ、頼もしいことはあるのだろうけど。

 

「(とはいえ、東條先輩に近付く不届き者は許さねぇ)」

 

そんな訳で今ぼくは例の男を尾行している。生活圏が近いので、偶然に見かけることが多いのだ。

 

「(今日はあの友達も居るな、やはり家族だったか…)」

 

東條先輩と親友、だとかなんだとか…、ちょーっと付き合いが長いからっていい気になっている友達のえーと、綾人?だっけ?

 

「(兄弟揃ってよく似ている…いや、兄の方がまだ頼もし…)」

 

そこまで考えてぼくは頭を横に振る。何を考えているんだよ、ともかくどうにかあの男が一人でいる時に「東條先輩に近付くな」と言ってやらないと。

 

「なぁ兄貴、腹減ったからなんか奢って」
「えぇ…?」

 

夕飯もうすぐだぞ?と男は注意するが綾人は気にする事なく言葉を続ける。

 

「肉まんがいい」
「俺の話聞いてた?」

 

グイグイと男の腕を掴んでコンビニへ向かう綾人と、しょうがないなぁ、という雰囲気の男。

 

「(今日はこのまま一緒に家まで帰る感じか?ならぼくも今日は撤退するか…)」

 

ぼくはその日の尾行をやめて家まで帰ることにした。幸いちょこちょこ見かけるのでチャンスはいくらでもあるだろうと思っていたが、最初に出会った時以外、誰かと一緒の場面ばかりだ。

 

「(今日は…友人と一緒か?)」

 

どこかから帰ってきたところだろうか?手にはゲームセンターの袋を持っている。

 

「ミーコと会うの久しぶりだなぁ…、俺たちのこと覚えててくれてるかな?」
「うーん…」

 

どうだろうな?なんて笑う男と友人たち。今日もどうやら一人にはならないようだ。

 

「(タイミングが悪いな…、それにしてもあの男の友人、カッコいいな…)」

 

そりゃ東條先輩には敵わないけれど、悪くはないかな…なんて思ってしまう。あんな冴えない男とどうやって友人になったのだろうか?会話の内容はあまり聞き取れないが、三人は楽しそうにしている。

 

「(……気になる)」

 

もう少し観察していてもいいかもしれない、と思いながらぼくはその日の尾行をやめて家に帰った。

 

-

 

「………」
「どうしたんだ?___」

 

離れて行く人影をチラ見していれば、秋人に声をかけられて俺はなんでもないと笑う。

 

「(あの日、あの子を助けてから尾行されるようになった…)」

 

とはいえ誰かと一緒に居るとすぐに離れていくので、話しかけようとはして来ない。

 

「(一人になるところを狙っているのか…?)」

 

じっくりとは見ていないが、やはり見た目は可愛らしい女の子のように見える。しかし顔がはっきりしているので男と思うべきだろう。

 

「(しかしロックオンされているのはマズイな)」

 

どうにかして解決しなければ、しかし相手の名前も分からなければ年齢も分からない。

 

「(困ったなぁ…)」

 

そう思いながら、俺は家へと帰った。

 

(END)-
秋人「ミーちゃん、ふふ、ミーちゃんお久しぶり♪」
主人公「(おい滝本、なんだその顔は、ミーちゃんをダシにイチャつくのは許さんぞ?)」
滝本「ど、どうした___…?」

 

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