黒髪の主人公・水元編

「(お、水元いたいた、おーい)」


昼飯を食べようといつもの場所に向かっていた時のこと。聞き慣れたうるさい声の主が心の声でオレを呼んできやがった。


「普通に声に出せ、よ…………」


まったく、と思いながら振り向いてオレはその変化に戸惑った。


「ごめんごめん、便利だからつい」


とてとてとオレの元へやってきた___の頭に釘付けになる。そこにあったのは見慣れた紫色ではなく真っ黒に染められた髪で、オレは思わず目を細めた。


「面白い顔になってんぞ」

「は?」


いやお前、え?どういう心境でそんな行動を……?


「どうどう、萎えた?(効果あるっぽい?)」

「はぁ???」


___の意味の分からない言葉にオレは更に困惑する。さっぱり意図が分からんぞ?なんなんだお前。


「(いやー、髪色が同じカップルって見かけないし、似た系統にしたらフラグ折れんのかなって)」


で、気になったから試してみたと?馬鹿じゃないのかコイツ。


「お前、オレと恋人なの嫌なんか?」

「嫌ではないけど……」


確かに髪色が違うと印象はだいぶ変わるが……、見慣れない姿の___を見て、オレはコイツには似合わないなという言葉が自然と浮かんできた。


「(というかコイツの弟が真っ先に浮かんできて……)」


___らしくない、そうだな、そんな感じだ。


「……萎える」

「おぉ、効果あるんだな」


オレの言葉に___は何故か嬉しそうな声を出す。体を張った検証をするんじゃねぇ、とオレは___の腕を引っ掴んで抱き寄せる。


「ちょっ、なにして…!(萎えてるんじゃねぇのかよ?!)」

「ひとつだけ、勘違いするじゃねーぞ?」


オレは真っ黒に染められた___の髪を軽く引っ張る。


「そもそもオレの髪は黒じゃねぇ、染めるんならちゃんとオレの色に染めろよ」


そう言って頭を叩けば___は少し頬を染めた。


「…………本当に折れたら嫌だから黒にしたんだろ?」

「イイエチガイマス」


なんだそのわざとらしい言い方は?オレには全て筒抜けなんだぞお前。


「チッ、早く元の色に戻せってんだ」

「はいすみませんでした」


心のこもってない言葉にムカついてオレは___を抱きしめる力を強めた。次の日、元の髪色に戻った___にオレはまた驚いた。


(END)-

水元「早く戻せとは言ったが染めて戻せとは…」

主人公「いや、違うんだ!起きたら戻ってたんだよ…っ!」

水元「……はぁ?え、マジなんか……?この世界怖過ぎだろ」

 

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