黒髪の主人公・綾人編

ある日、兄貴が髪の毛を黒に染めて帰ってきた。


「……は?」


え?なんで?どういう心境でそんな……え?リビングに入ってきた兄貴をオレは困惑しながら凝視した。


「ただいまー、どう?染まってる?」


のんきそう聞いてくる兄貴が髪の毛を触りながら見せてくるので、オレは遠慮なくその髪の毛を引っ張った。


「いって!」

「うわっ!?マジで染めたのかよ?!」


グイッと引っ張られた兄貴がやめろ!と抗議の声を上げて軽くオレの手を叩いた。


「いきなり引っ張るな!」

「地毛だと思わなかったんだよ!」


いやなんで染めたんだよ?!とオレは勢いよく兄貴の頭を掴んで引き寄せれば、兄貴が軽くうめき声をあげる。


「こら、綾人……!」


いい加減にしろ、と言いつつも抵抗してこないのでオレはまじまじと兄貴の髪を見る。紫だった髪が真っ黒に染められ、明かりに照らされてキラキラしている。


「(なんで、よりにもよってオレと同じ黒なんだよ……!)」


兄貴の頭から手を離せば、兄貴が首に手を当てて「いてて」と声をもらす。そこに居るのは紛れもないオレの兄貴なのに、普段と違う姿でドキドキしつつ寂しいと感じてしまう。


「で、どうよ?」


ちゃんと染まってた?と聞いてくる兄貴がへらっと笑う。


「綾人とお揃いの色」

「……っ」


その言葉にオレの中で色んな感情がぐっちゃぐちゃに混ざり合って思わず叫んだ。


「に、似合ってねーよ!くそ気持ち悪い!!」


赤い顔を見られないようにオレはすぐさまその場から離れ自室に逃げ込んだ。くそ、なんだよ……!お、お揃いって……。


「バカ兄貴……!」


ドキドキとうるさい胸の音に、オレはその場にへたり込んだ。


(END)-

母親「お兄ちゃんが黒髪に染めてて思わず写真撮っちゃったの」

綾人「……友達に見せたいから送って」

 

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