出会い
「(はぁ…、この後は接客のバイトして、その次が清掃で…、明日はえっと…)」
大学の終わりに電車を待ちながら今後の予定を確認する。俺は所謂、苦学生というやつだ。大学に進学してからまだ日は浅く、新しい環境になれず、忙しない日々を過ごしている。
「電車が間もなく発車します」
「!!」
アナウンスが聞こえて前を見れば、目的の電車が来ていたようで慌てて乗り込む。ふぅ、考え過ぎてたかな、と空いてる席に座ろうとして肩を叩かれ声をかけられた。
「これ落としたぞ?」
「え?」
慌てて追いかけてきてくれたのか、少し必死な表情の男性だ。これ、と差し出しているのは俺の学生証。
「あ、ありがとう…!」
受け取ったと同時に電車の扉が閉まってしまう。男性は「あ」と言葉をもらし、閉まってしまった扉を唖然とした顔で見ていた。
「ご、ごめん…!俺が落としちゃったせいで…」
「いや、次の駅で降りればいいし…」
ははは、と苦笑いする男性が学生証を指差して笑った。
「それ、俺と同じ大学だな」
「え、そうなのか?」
同じ大学の人だったとは偶然とは言え嬉しいものだ。周りに迷惑にならないよう、小さな声で会話をする。軽く自己紹介をして、今年から?何を専攻にしてる?など話していれば共通点がポツポツと出てくる。
「あ、あの良かったらさ…」
これも何かの縁だ、___とは気が合いそうだしもっと仲良くなりたいなと、話し出そうとして電車が駅に着いてしまう。
「じゃ、また大学でな!今度は俺の友達も紹介するよ」
そう言って電車を降りていく___の後ろ姿を暫く眺め続けた。その後、___に紹介してもらった友達と、恋仲になるのはまた先の話…。
(END)-
秋人「___と出会えて良かったと思うよ」
主人公「……え?あぁ、うん?」
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