VS片想い
俺には仲の良い友達がいる。ぼやーっとして、何を考えているのか分からない無表情気味な男友達。
「猫を飼い始めたんだよ、白い猫」
小さくて可愛くてと手で大きさを教えてくれる___。
「(お前にそんな顔をさせるとは…)」
いつもよりテンションの高い___を見て、猫相手に悔しいなんて思ってしまう。
「滝本は犬と猫だったらどっちが好き?」
「……猫だな」
___をじっと見つめてそう言えば、俺もーと笑う。
「(可愛いやつ)」
こんな俺の気持ちなど知らずに無邪気に、楽しそうに猫の話をして携帯で写真を見せてくる。仲の良い友達だ、そうとしか思っていないだろう。
「(伝えたら、どんな反応をするだろうか…)」
そんなことを日々考えて、その想いを秘めたまま俺たちは高校三年生になり、修学旅行の夜のこと。同じ班で同じ部屋、隣同士の布団で誰が好き?どんな子が好き?という話で盛り上がる。
「清楚な子〜」
「か、勝ち気かな…」
わいわいと小声で、顔を近付けて話し合う。俺は、なんて言おうか…、そう考えていれば___が語り出す。
「俺は髪の長くて、おっぱいが大きい子だなぁー」
欲望に忠実か!と他の班の男子に言われ、たははと笑う___。その顔に嘘偽りもなく、背は高くてもいいかな、可愛い子がいいな、なんて話す。
「滝本は?」
「……守ってあげたくなる子」
そう言えばなるほどー、と呟く。俺はあの笑顔を壊したくなかった。この関係を壊したくなかった。
「(諦めよう…)」
この気持ちは実らない、実らなくてもいい。心の奥底に沈めて、秘密にしよう。そうして高校を卒業して、俺は___と同じ大学へと進学する。
「あ、滝本ー」
「なんだ?」
ある日の授業の初めで___に声をかけられる。隣には初めて会う男が立っていた。
「この前、仲良くなったやつでさ、滝本にも紹介しようと思って」
「初めまして、秋人って言うんだ」
苦学生なんだってさ、なんて笑う___と、そんなこと言わなくていいと焦る秋人。
「よろしくな」
「あ、あぁ…」
可愛い顔だな。遠い記憶にある___の笑顔が消えていく。あれは儚い恋だった。想っているだけでは実らないものだと教えてもらった。
「(初恋なんてそんなもんさ)」
いい経験だった、と納得して俺は新しい出会いに感謝した。
(END)-
滝本「高校の時、お前のことが好きだった(酔ってる)」
主人公「ぶふっ?!?!」
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