作戦会議
「偵察基地奪還ねぇ…」
ジェミルとアイラはロントスから話を聞き、状況の把握をする。
「バロアたちはバロアたちで基地の奪還に専念したいらしく、僕ら神に人質になった仲間を助けて欲しいとお願いしてきて…」
「人質の救出か」
ジェミルはヒトからもらったリンゴを一つ手に取ると、じっとそれを見つめる。アイラは表情一つ変えずロントスを見る。
「あのアイラさま」
「ここではアイラですよ、話はレミエスから聞いています。ワタシはロントスの指示に従いましょう」
アイラの言葉にジェミルは何のことかわからず質問する。
「なんの話だ?」
「レミエスさまに救いを求めたんだ、そうしたらアイラ…を貸すと」
なんだそれは?と首を傾げつつも、主神自ら出させるわけにはいかないか、と妙に納得するジェミル。さてどうやって人質を救出するか考えよう、と言うロントスに対し、アイラはただ指示に従います、とだけ言う。それにロントスは頭を抱えた。
「そもそも人質は偵察基地のどこに居るんだ?レミエスなら分かるだろうが、俺たちでは…」
「そういえばアイラ、は遠くのものを送ったり、取り寄せたりできるよね?」
ロントスの言葉にアイラはそうですよ、と答える。人質の救出に活用できないかな?と呟くロントスに、アイラはすぐに否定する。
「ワタシのこの力は、ワタシが触れたことのあるものに限ります。人質になっている方々に、ワタシは触れたことがありませんね」
「そう都合よくはいかないな」
どうする?とジェミルに問われ、ロントスは腕を組んでうーん、と唸る。なんとかして、活用できないか…、と考え、ふと思いつく。
「あ、の…、触れてしまえばこの場所に人質の方を全員送ることができますよね…?」
「ええ、触れることができれば」
アイラならヒトに捕まったとしてもすぐに逃げられますよね…?と聞くロントスに、アイラはもちろん、と即答する。それのやりとりを聞いたジェミルは、もしかして、と言う。
「アイラをわざと敵対に捕まえさせて、偵察基地に送り込み、人質を探してもらってこちらに救出してもらう…というのは、ダメだろうか?」
「もちろんできますよ、そうしましょうか?」
神だからできる芸当だ、副神であるアイラならロントスのようにヒトに捕まえられて手も足も出ない、なんて事はない。例え銃火器を撃たれたところでアイラにはまるで効果はない。
「その、一人で何もかもを押し付けてしまいますが…」
「ロントスはどうするんだ?」
ジェミルの問いかけに、ロントスはすぐに答えた。
「バロアたちが基地奪還に専念できるように治癒をするよ」
「ならば俺も側にいる」
絶対に居る!というジェミルにロントスは少し引くが、何を言っても聞かないだろうからとそれを呆れ気味に受け入れる。
「アイラ、その、お願いします」
「ええ、作戦決行はいつですか?もう捕まりに行ったほうがいいですか?」
今にも行ってしまいそうなアイラをロントスは慌てて引き止める。作戦会議はバロアたちもしている。ここで決まったことを伝えて、それから決めると告げると、アイラは大人しく座る。
「わざと捕まるなら、捕まえられやすい姿になるべきじゃないか?」
なにかないか?と聞くジェミルにロントスはここに来た当初を思い出す。
「金目のものに目がなかったかな…、僕の時は暴行してきたけど」
なんだと?!と言ってロントスの肩をガッチリと掴むジェミルを無視してロントスはアイラと会話する。
「話によれば今は指示を出しているリーダー格が居るようだし、賭けてみよう」
「ええ、それでいきましょう」
怪我とかしたのか?!暴行ってどんなことをされたんだ?!と必死になるジェミルをロントスはただただテキトーに流してバロアの元へ行く。
「おう、神さんたちの話は終わったのか?」
「はい、アイラが、頑張ってくれるそうです」
僕も治癒で手助けします!と意気込むロントスに、バロア思わず目頭が熱くなる。
「ロントスぅ、お前さんはいいやつだなぁ!」
「バロアたちの方はどうだい?」
ロントスに尋ねられバロアは親指をグッと立てる。
「神さんたちが良いならいつでも行けるぜ!それこそ明日にでもな!」
「あ、明日はちょっと…、だけどそうと決まれば作戦を立てよう!」
ロントスの言葉にバロアは頷き、2人は偵察基地奪還と人質救出の作戦を決めるのであった。
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