椋木くんと主人公1
許さない許さない許さない。俺のメシアでカミサマである生徒会長に近付く俗物どもが許さない。その中でも親友だとぬかしている男が特に憎い。
「(裁きを…下してやる!)」
名前から行動まで、全てを把握して確実に制裁してやると俺は行動に移す。学校帰りの後を追い、俺は情報収集から始める。
「(メシアに付き纏う悪魔め…)」
馴れ馴れしく話しかけて、無礼な…。
「あ、ちょっと喉渇いたから飲み物買ってくる」
「いってらっしゃい」
そう言って生徒会長から離れていく悪魔。まだ制裁を下すにはモノが揃っていないが、髪の毛くらいなら奪えそうだなと後を追おうとして、生徒会長の声がして足が止まる。
「あ、お兄さん」
「東條くんだ、学校の帰り?」
悪魔の後を追うのをやめて生徒会長の様子を慌てて確認する。やけに親しげに生徒会長に話しかけた愚か者は、なんとあの悪魔と似た顔の俗物だった。
「一人?」
「いえ、綾人と一緒ですよ、ほらあそこで飲み物を買ってます」
ホントだー、と情けない声を出して悪魔に手を振る男。
「おーい、綾人ー」
「は、なっ?!兄貴?!」
何してんだよ!と怒る悪魔が男に近寄る。コイツら兄弟か…。
「もっと早くに来いよ!」
「それはつまり飲み物買わせる気だったってことか?」
悪魔兄弟の会話を聞いた生徒会長が、楽しげにキラキラと笑っている。
「(あ、あんな笑顔を…!そんな俗物どもなどに…!!)」
俺のメシアを、カミサマを誑かす悪魔どもめ…!許さない許さない許さない…っ!!悪魔だけではない、その兄も必ず制裁を、裁きを下さなければ…!
「…ん?」
「どうかしましたか?」
写真を撮った直後に悪魔の兄が俺の方に視線を向けたので、俺は息を潜めて身を、存在を隠す。
「……いや、今日はもう早く家に帰った方がいいよ」
「そうですか?じゃあそうします」
「じゃあな東條ー。おい兄貴!コンビニ寄って帰ろうぜ」
生徒会長に手を振って離れ、悪魔が兄の腕を掴んで遠ざかっていく。生徒会長はその背中を見送りぽつりと呟いた。
「ふふ、やっぱり面白いな…」
満足げに、楽しそうに、キラキラと…。
「(あの男、俺の存在に気付いた…のか?)」
悪魔の兄、手強そうだ…。兄弟揃って俺のメシアを誑かすやつらめ…。決めた、必ずあの兄弟に裁きを下してやる…!急いで後を追い、俺は情報収集に徹した。
(END)-
綾人「さっきからどうしたんだ兄貴?」
主人公「い、いや(めちゃくちゃ何者かに尾行されてる…)」
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