椋木VS三郷2

学校の授業が終わり、生徒会の作業も終わろうとしていた頃。生徒会室の扉が乱暴気味に叩かれた。

 

「おー、邪魔するでー」
「三郷くん?」

 

ガラッと勢いよく扉を開けたのは、なにかと生徒会長に失礼な俗物だった。この前なんか天使サマにもちょっかいを掛けてきて、俺の家まで着いてくるという実に腹立たしい存在だ。

 

「生徒会に来るなんて珍しいね、何の用かな?」

 

そんな存在にもにっこりと微笑んで対面するカミサマ。俗物め、なんと腹立たしい…!

 

「優等生に用ないわ、椋木もう帰るんやろ?」
「……は?」

 

しっしっ、とカミサマに対して手で払う仕草をしたと思ったら、急に俗物が俺の方を向き話しかけてきた。

 

「お、もう帰る準備できてるやん、ほな行こうや!」
「は、は!?な、何を…っ?!」

 

この俗物は一体なにを考えているのか?俺の腕を掴むとそのまま引っ張って何処かへと連れて行こうとする。あまりにも唐突な行動にロクに抵抗できず俺はカミサマに挨拶もできずに連れて行かれてしまった。

 

「……三郷くんと椋木くん、いつの間にか仲良くなってたんだね?」

 

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「おい!貴様いい加減にその手をっ、離せ!!」
「あでっ?!」

 

ずるずると引き摺られ続け、漸く振り払うことに成功した時にはもう学校の外だった。

 

「な、何のつもりだ貴様…!!」

 

キッと睨みつけ威嚇するが俗物はへらへらと笑って答える。

 

「なんやねん、その態度の変わり様は?まぁええわ、今日はな、ちょっとお願いがあって椋木に会いに来てん!」

 

堪忍な?などとおどけた態度をする俗物に、俺は軽蔑した目を向ける。

 

「貴様の願いなんて知るか!」
「オレの名前は三郷天晴や!それでな、お願いなんやけど…」

 

まるで人の話を聞かない俗物にイライラする。

 

「綾人の兄ちゃんに会いたいねんけど」
「なっ?!」

 

家に行ってええ?などと、とんでもない発言をする俗物に俺は手が震える。

 

「て、天使サマに何の用だ…!?」

 

その返答次第では今ここで裁きを下さねば…!と警戒している俺に対して俗物は不思議そうな顔をしつつ答える。

 

「なんや天使て?よう分からんが、綾人の兄ちゃんに聞きたいことがあんねん」
「それならば俺が伝える、そう容易く会わせるものか」

 

俺の言葉に俗物は「えー?」と不満げに声にすれば口を尖らせた。

 

「ええやん!綾人の話とかもしたいし、綾人の兄ちゃんとも幼馴染やでオレ?」
「それがどうした?貴様になぞ会わせん!」

 

三郷や言うてるやろ!と怒る俗物とこれ以上話すこともないと、俺は家まで走り出す。

 

「あ、ちょ…!」

 

それに対して俗物は俺を追いかけてくる。

 

「……くっ」

 

は、早い…!全力疾走しているのに、俗物は容易く俺に追いついてくる。

 

「オレは諦めの悪い男やからな!そもそも椋木の家は知ってんねんで!」

 

がはは、と笑う俗物に俺は嫌悪の眼差しを向けるが俗物は全く気にも留めない。そうして俺の家まで着いてきてしまった、天使サマに会わせるわけには…!

 

「……!」

 

玄関を開けるのを躊躇っていれば電話がかかってきた、天使サマからだ。

 

「も、もしもし…?」

 

無駄に走って体力を消耗してしまったので息切れしながら応答する。天使サマは俺の声にどうしたの?と不思議そうな声で尋ねてくる。

 

「い、いえ…、天使サマが心配することでは…」
「お、なんや綾人の兄ちゃんか?ちょいそれ貸してーや!」

 

俺の不意をついて俗物が俺から電話をぶん取って天使サマに話しかける。な、なんてことをするんだコイツは…!取り返そうと手を伸ばしたが片腕で抑えられてしまう。

 

「綾人の兄ちゃん?オレやオレ!ちょっと聞きたいことあんねんけどええ?」

 

俺の天使サマに馴れ馴れしい…!この前の事といいなんなんだこの俗物は…!俺から天使サマを奪おうとしている悪魔なのか?!許さない、許さない、許さない…!!

 

「おー、そうか!助かったわ!うん?ほうほう、分かった、伝えとくわ!」

 

じゃ、と言って勝手に電話を切る俗物に俺は怒りが頂点に達した。

 

「きっさま…!!」

 

今すぐにコイツに裁きを…!

 

「助かったわ、はい返すで?あと綾人の兄ちゃん今日は帰えんの遅れるんやって」
「………は?」

 

俗物の言葉に俺は頭が真っ白になる。帰りが遅れる?それは、どんな理由でだ?まさかタキモトたちにまた無理に誘われたのか?それともバイトで無理に働かされて…?

 

「なんや不安そうな顔して、寂しいんか?よっしゃ!なら兄ちゃんが帰ってくるまでオレが居てやるさかい安心しいや!」

 

バンバン!と俺の背中を叩き笑うこの不愉快な俗物に、俺は心底嫌そうな目で睨みつけるがやはり気にも留めない。

 

「目障りだ!」

 

俺はそう言って玄関を開けて俗物が侵入してくる前にすぐに閉めた。

 

「ちょ、椋木ー?!」

 

頭が痛くなる、なんなんだコイツは…。俺は玄関の鍵を閉め、その場に座り込み天使サマが帰ってくるのをその場で待ち続けた。

 

(END)-
椋木「て、天使サマ…、お帰りなさい…!」
主人公「(めちゃくちゃ疲れた顔してる…、三郷くんと何があったんだろうか?)」

 

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