秀才くんと主人公2

現在、俺はとある高校生とカフェに居る。先日、普通に歩いていたら足元に眼鏡が滑り込むように現れ、避ける間もなく思い切り踏んづけてしまったのだ。なんだよそれ、回避不可能とか勘弁してくれ。そうしてその眼鏡の持ち主を大号泣させてしまい、それをほっとくのはあまりにも外道だし、周りの目も凄まじく痛かったので必死に宥めて弁償した。眼鏡って高いなー…。

 

「あ、あの、改めて先日はありがとうございました!」
「え?いや俺は謝る側だし…」

 

きっちりと制服を着ているこの高校生。とても几帳面そうなのが節々で伝わってくる。なぜ俺はお礼を言われているのだろうか?と首を傾げてしまう。あとこの高校生、制服が綾人と同じだ。

 

「(お礼がしたい!と言われて手頃な店でご飯を奢ってもらうことにしたが、それじゃやっぱり足りない!なんて言われてこうしてカフェに居るわけだが…)」

 

どうしようかな、このフラグ。物凄い真面目にお礼の品ですって菓子折りを渡してくる秀才くん。ご丁寧にどうも、と言って受け取って、事務的に対応するか…と考える。

 

「本当に、___さんには感謝しているんです…」
「はぁ…」

 

なんでこんな感謝をされてるんでしょうか?新しく買った眼鏡、学校で褒められたんですよ、なんて話す秀才くん。そう、良かったね、とテキトーに答えつつコーヒーを飲む。

 

「(相手は高校生で、綾人と同じ学校の子…、兄弟であることを知られたら厄介だな)」

 

前回は人として放っておくことは出来なかったので、今フラグを折らなければと相手の出方を窺う。

 

「……あ、あの」

 

む、なにやら訳あり顔で悩みを話してきそうな雰囲気。これは相談をされそうだな、ならばそういう時は…と行動しようとして意外な人物に声をかけられた。いや意外でもないか。

 

「あれ…?兄貴?」
「秀才くん…?どうしたの?」

 

そう綾人と東條くんである。意外な組み合わせだね、と綾人の後ろにいる東條くんが不思議そうな顔をする。綾人と兄弟なのがバレてしまった、どうしようと思っていたら秀才くんが慌てて立ち上がり東條くんへ頭を下げた。

 

「せ、生徒会長!こんなところで出会うとは…!」

 

あたふたした感じで東條くんを生徒会長と呼び、何やら敬愛の眼差しを向ける秀才くん。

 

「なんで兄貴が生徒会の奴と一緒に居るんだよ」

 

むぅ〜っという顔をしてそんなことを言う綾人の言葉で理解した。この子、東條くん繋がりの子か…。

 

「秀才くんは副会長なんですよ」

 

聞いてない、聞いてないのに説明してこないで。東條くんの言葉に秀才くんが少し照れ気味に俺を見てくる。

 

「まぁいいや、丁度いいからなんか奢ってくれよ」
「おっまえ…」

 

ラッキー、と言いながら俺の隣にどかっと座ってメニュー表を見る綾人。それに続いて東條くんが秀才くんの隣に座る。

 

「(どういう状況だよ…)」

 

これではフラグを折ることが難しくなる。だが秀才くんは隣に座っている東條くんを気にしているのか、少し落ち着きがない。

 

「(……ははん)」

 

なるほど、東條くんはモテるもんね。それはもう男女問わず…、しかしそうか、つまりさっきの相談はコレだったのかな?と推測する。

 

「で、なんで一緒に居るんだよ?」

 

注文をし終えると綾人がしつこく聞いてくる。まぁ気になるわな。

 

「先日、不注意で落とした眼鏡を拾ってもらいまして、壊れてしまった眼鏡を新調してくれたんです」
「へぇ、そうだったんだ」

 

正しくは壊した本人なんだけど、秀才くんはそこを伏せて伝えてくれた。東條くんはだから新しくなったんだね、と笑う。

 

「なんで兄貴が眼鏡を買うことになるんだよ」
「眼鏡がないと不便だろ…」

 

実際は俺が踏んで壊したんだし人として弁償したんだが、あえて伏せてくれたので俺もそうして話を合わせる。そうして成り行きで高校生たちを奢ることになり、結局また秀才くんからこのお礼をさせて下さいなんて言われてしまった。

 

「(ぐぬぬぬぅ…)」

 

東條くんは綾人と出来ちゃってるし、秀才くんのフラグ、どうしたらいいだろうか…、俺は頭を抱えた。

 

(END)-
秀才「(何処かで見たことあると思ったら綾人くんのお兄さんだったのか…)」

 

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