抜け出せない主人公・綾人編
夜、夕食を食べ終わり俺と綾人はテレビを観て過ごしていた。
「……」
ふと綾人が船を漕いでるのが視界の端に見え、テレビから視線を外して様子を窺ってみれば、ほぼほぼ寝ていた。
「綾人、寝るなら部屋に戻れよ」
「んー…」
俺も寝るか、とテレビを消して綾人の肩を軽く叩く。しかし既に夢の中なのか「んー」とか「うー」とかしか言わない。
「しょうがないな…」
部屋まで運ぶか、と思い机に置いていたスマホを取ろうと綾人に背を向ければ、突然抱きつかれた。
「は?!」
なんだ?!なんで?!ぎゅっと力いっぱいにくっつかれ、起きたのか?と思ったが綾人から寝息が聞こえてくるのでまだ寝ているようだ。
「ちょ、お前…、これじゃ運べない…!」
寝ているくせに力強くがっしりと抱きついている綾人を引っぺがそうとするも、びくともしない。
「ぐぬぬ、力強くなりやがって…!」
こんな状態では運べない、どうしようか、せめて後ろからではなく前から抱きついてくれてれば、いやそれはそれで困るというか。
「兄貴…」
幸せそうな声で俺を呼ぶ綾人に、深いため息が出る。
「……母さーん!毛布取ってー」
俺は諦めてソファで寝る事にした。
(END)-
母「あらあら、仲良しねぇ」
主人公「は、はは…」
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