酔っ払い主人公・滝本ペア編

「じゃーん!今日はすごくいい酒買っちゃった~!」とあるテスト明けでマサヤの家に集まった時のこと。いつものメンバーで宅飲みをしようと各自で酒やツマミを持ち寄り小さなテーブルに集まれば、マサヤが楽しそうに笑いながら一つの酒瓶をテーブルにドンと置いた。「おぉ……」それを俺たちはじっと見つめる。これってそこそこお高いやつじゃ……と思っていれば___が珍しくそわそわし始めた。「俺これ飲んでみたかったやつー」「だろだろ?前に話してるの聞いて美味そうだなって思って、思いきってみた!」今回のテストは大変だったからパーっといこう!と笑うマサヤに洋司がはしゃぎ過ぎるなよと釘を刺す。「分かってるって」「もう注いじゃう?」コップを持ってそわそわしている___に、滝本が軽く笑った。まぁ、確かに今回はなかなかテスト大変だったし、たまにはいいかと俺もマサヤの提案に乗って、ワイワイと酒を呑むことにした。………………それから数時間後、持ち寄った酒も切れ、マサヤが買った酒瓶も半分無くなった頃。家主のマサヤはぐーすかと眠ってしまった。「……はぁ、まったく」そんなマサヤを赤い顔をした洋司がベッドへ移動させる。時計に目を向ければもういい時間だ。確か、いつもなら___が家に帰ると言い出す時間のはずだが……。「…………」当の___は真っ赤な顔をしながら未だに酒を飲み進めている。俺は大丈夫か?と少し不安になった。「___、そろそろ飲むのやめろ」「んー」滝本もそれに気付いたようで、___からコップを取り上げようと手を伸ばせば拒まれてしまう。「まだのむ」駄々っ子の子供のように舌ったらずな言葉を発する___。珍しく完全に酔っ払っているようだ。「___、今日は家に帰らなくていいのか?」「いえー?しらない」うまーい、なんて言いながら更に酒を飲もうとする___に、滝本がため息をついて無理やりコップと酒瓶を取り上げた。「あ、こら、たきもとー」「いい加減にしろ」取り上げられたコップと酒瓶を取り返そうと手を伸ばす___に、俺はダメだと制止した。「ほーら、___?水飲もうな?」「やだ」思いの外、力強く抵抗されて俺から滝本の方へ向かおうとする___の腕を力いっぱい掴みその場に座らせた。

「……これ帰らせるのダメなやつだな」「はぁ、___にしては珍しい……」やだやだ、まだのむ!かえせよー!と俺の体をぺしぺし叩き始めた___に、滝本が軽く頭を叩けば大袈裟に「痛い痛い」と言い始める。「洋司、そろそろ片付けて……」家主のマサヤは寝てしまっているので滝本が洋司を呼ぶが、ベッドの方を見て俺は呆れた。「いつの間に洋司まで寝てるんだよ」静かだなとは思っていたが、今ここで___から手を離せばまた酒を飲み始めてしまうだろうし……、仕方がない、このまま俺が押さえて滝本一人に片付けてもらおう。「とりあえず水を持ってくる」「頼んだ……」いじわる!と喚き散らす___を宥めながら俺は滝本から水を受け取り、___に無理やり飲ませる。まったく、はっちゃけ過ぎると手のかかる子供になるんだから、と思いながら滝本にテーブルなどを片付けてもらい、___を男二人がかりで横にさせた。「よーしよし、寝ような」「うー……!」不機嫌な___に俺はポンポンと一定のリズムで体を優しく叩けば、酔いが回りに回った___は暫くしてすーすーと寝息を立て始めた。「……寝たか、じゃあ電気消すぞ?」「はーい」そうして俺と滝本も横になって眠った。(END)―主人公「うっぐ、あったまいてぇ……!」秋人「そりゃあんなに呑んだらなぁ……」滝本「どうせ寝る前のこと覚えてないんだろ?」Top-

片想いに別れを

俺には仲の良い友達がいる。ぼやーっとして、何を考えているのか分からない無表情気味な男友達。猫を飼い始めたんだと手で大きさを教えながら嬉しそうな顔で話す友達を見て、俺は自然と口角が上がった。「(可愛いやつ)」俺はそんな友達の、___のことが好きだ。高校に入学したある時に知り合い、別のクラスだった___が三年生で同じクラスになり俺は心底喜んだ。「(今ではすっかり親友と呼べる距離感にいる)」こんな俺の気持ちなど知らずに無邪気に、楽しそうに猫の話をして携帯で写真を見せてくる___は、俺のことなど仲の良い友達だとしか思っていないだろう。「(この想いを伝えたら、どんな反応をするだろうか……)」日に日に増していく想いを隠しながら高校生活を送り、修学旅行の夜に集まって好きな子の話で盛り上がった。俺はその話題に内心焦りながら___の回答を聞いて胸が痛くなった。「俺は髪の長くて、おっぱいが大きい子だなぁー」欲望に忠実か!と他の班の男子に言われ、たははと笑う___。その顔は嘘偽りもなく、背は高くてもいいかな、可愛い子がいいな、なんて話す___。「滝本は?」「……守ってあげたくなる子」___に聞かれた俺は、苦しみ紛れにそう答えた。俺の想いを告げればあの笑顔を壊すことになるのだろうか?俺はこの関係を壊せるのだろうか?「(諦める、べきだ)」そんな言葉が浮かんでくる。心の奥底に沈めて、秘密にするんだと……。そんな想いを引き摺ったまま、俺は大学の入試合格発表の日を迎えた。「お、滝本もう来てたんだな」「おー」おはよう、早いな、もう見た?と聞いてくる___にまだ見てない、と答えればじゃあ見に行こうと俺の隣で笑う。「(……いい加減に、しないとな)」いつまでもこのままでいるべきではない。今日で終わりにするべきだと決心して俺たちは番号を見に行く。「えーっと……」俺たち以外にも番号を探している人だかりの後ろから、ここから見えるだろうか?と背伸びをして確認する___を横目に、俺も自分の番号を探した。「(…………!)」上の方に自分の番号を見つけ、合格していることを知る。しかし喜びよりも先に、俺は別のことを考えた。「(___は……どうなんだ?)」そこまで勉強が不得意、ではないがそこそこな___。これまで互いの家で勉強会をしたりもしていたが、合格してくれているのか気になって仕方がない。「あ」不意に___が声をあげ、俺は___を見れば、___が指を差しながら俺に笑った。「あったあった、滝本はどう?」無事合格してたー、といつもの笑顔をする___に俺は真っ直ぐ向き合い、___の名前を呼んだ。「___」「ん?」ここからじゃ見えない?なんて言う___に俺は言い放った。「俺は___のことが好きだ」ずっと隠していた、秘めた想いを俺は遂に吐き出した。そんな俺の言葉に___がぽかんとした顔をする。「…………」目をぱちくりとさせている___に、俺は気恥ずかしくなってしまい、___の耳元で囁いてその場から逃げ出すことにした。「大学でもよろしくな」「え、ちょ……!」名前を呼ばれても俺は止まることなく___から離れた。あぁ、言ってしまった、もう今までのような関係ではいられなくなっただろう。「(だがそれでも、終わりにするべきだ)」好きという気持ちを俺は諦められなかったんだ。親友でなくなってもいい、嫌われるかもしれない、それでもこの想いを告げて、もっと深く___と関わりたいのだ。「(もっと___に俺を知ってほしい、もっと___のことを知りたい)」もっと向き合いたいんだと、俺は一人、晴れ渡る広い空を見上げた。(END)―主人公「(親友から告られた……?え、そんな、漫画みたいなことある……??)」母親「あら___、どうしたの?難しい顔しちゃって」

 

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黒髪の主人公・斗真編

眠いと小さくあくびをしながら大学へとやって来て、教室に向かってトボトボと歩く。


「(今日は、涼太は休みって言ってたな)」


涼太の居ない学校など全くもってやる気が出ない。とはいえ単位の為にもしっかりと授業を受けておかないと、と思いながらよそ見をして歩いていれば、曲がり角で人とぶつかってしまい、相手の荷物を盛大にばら撒いてしまった。


「あ、すまん」


流石にボーッとし過ぎた。後日、友人から涼太に俺のやらかした話などされたら鬱陶しいし格好が悪い。俺は軽く謝ってばら撒いてしまった荷物を拾う。


「……」


ぶつかってしまった人物は特に言葉を発さず、少し驚いた顔で俺を見て、すぐに同じように落ちている荷物を拾い始めた。


「はい」


手早く拾い、一つにまとめて差し出せば、黒髪の男がペコリと頭を下げた。


「(無口なやつだな)」


…………どっかで見たことあるような気がするが、そういう人物はよく居るもんだ。


「じゃあな」


それだけ言って俺は歩き出し、教室へと向かう。黒髪、黒髪か……、涼太が恋しいと思ってしまった。


「(……あー、今のやつ___に似てたな)」


ふと思い出した友人の顔、さっきのやつとホクロの位置が同じだった気がする。でもあいつの髪は黒ではなかったはずだ。


「(まぁ、そんなことはどうでもいい)」


退屈な日の授業を頑張って受けることに集中しよう。そう思いながら授業を受け、後日、滝本から一枚の写真を見せられた。


(END)―

滝本「これ___」

斗真「(……?この前見たやつに似てるな?)」

 

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黒髪の主人公・水元編

「(お、水元いたいた、おーい)」


昼飯を食べようといつもの場所に向かっていた時のこと。聞き慣れたうるさい声の主が心の声でオレを呼んできやがった。


「普通に声に出せ、よ…………」


まったく、と思いながら振り向いてオレはその変化に戸惑った。


「ごめんごめん、便利だからつい」


とてとてとオレの元へやってきた___の頭に釘付けになる。そこにあったのは見慣れた紫色ではなく真っ黒に染められた髪で、オレは思わず目を細めた。


「面白い顔になってんぞ」

「は?」


いやお前、え?どういう心境でそんな行動を……?


「どうどう、萎えた?(効果あるっぽい?)」

「はぁ???」


___の意味の分からない言葉にオレは更に困惑する。さっぱり意図が分からんぞ?なんなんだお前。


「(いやー、髪色が同じカップルって見かけないし、似た系統にしたらフラグ折れんのかなって)」


で、気になったから試してみたと?馬鹿じゃないのかコイツ。


「お前、オレと恋人なの嫌なんか?」

「嫌ではないけど……」


確かに髪色が違うと印象はだいぶ変わるが……、見慣れない姿の___を見て、オレはコイツには似合わないなという言葉が自然と浮かんできた。


「(というかコイツの弟が真っ先に浮かんできて……)」


___らしくない、そうだな、そんな感じだ。


「……萎える」

「おぉ、効果あるんだな」


オレの言葉に___は何故か嬉しそうな声を出す。体を張った検証をするんじゃねぇ、とオレは___の腕を引っ掴んで抱き寄せる。


「ちょっ、なにして…!(萎えてるんじゃねぇのかよ?!)」

「ひとつだけ、勘違いするじゃねーぞ?」


オレは真っ黒に染められた___の髪を軽く引っ張る。


「そもそもオレの髪は黒じゃねぇ、染めるんならちゃんとオレの色に染めろよ」


そう言って頭を叩けば___は少し頬を染めた。


「…………本当に折れたら嫌だから黒にしたんだろ?」

「イイエチガイマス」


なんだそのわざとらしい言い方は?オレには全て筒抜けなんだぞお前。


「チッ、早く元の色に戻せってんだ」

「はいすみませんでした」


心のこもってない言葉にムカついてオレは___を抱きしめる力を強めた。次の日、元の髪色に戻った___にオレはまた驚いた。


(END)-

水元「早く戻せとは言ったが染めて戻せとは…」

主人公「いや、違うんだ!起きたら戻ってたんだよ…っ!」

水元「……はぁ?え、マジなんか……?この世界怖過ぎだろ」

 

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黒髪の主人公・滝本編

その日はいつものように大学に来て、いつもの席に座っていた。アキはまだだろうか?と考えていれば隣に人が座った。

 

「おはよー」

 

少し眠そうな声で挨拶をするのは___だ。授業の準備で広げていたノートから俺は目を離し、___に視線を向けて驚いた。

 

「よー、おは……よう」

 

そこに居たのは真っ黒な髪をした___だった。昨日までは紫だった髪が見事に真っ黒に染められている。

 

「…………」
「……え、そんなびっくりする?」

 

言葉を失っている俺に___は「おーい?」と言いながら困ったように笑う。どういう心境の変化だ?いや、黒といえば___の弟や母親と同じ色だったはずだ。

 

「(弟を見たことあるが、本当にそっくりだな)」

 

ふむ、こうして見ると瓜二つだ。マジマジと見つめれば___が引き気味に笑う。

 

「た、滝本ー?」

 

うーん、双子ではないんだよな?そこそこ歳は離れていたはずだし……、兄弟とはいえそんなにそっくりになるのか?

 

「た、滝本さん、近い近い……!」

 

口元にホクロを描いて目元のホクロを隠してしまえば……、ふふ、涼太辺りに写真を見せれば騙せそうだ。

 

「口元にホクロを書き足してもいいか?」
「はい?」

 

水性のペンはあっただろうか?と鞄を漁りながらそう聞けば、___はマヌケな声を上げた。

 

(END)-
秋人「うわ?!___、なのか?」
主人公「うわってなんだ?!」
滝本「(いい写真が撮れたな…)」

 

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黒髪の主人公・綾人編

ある日、兄貴が髪の毛を黒に染めて帰ってきた。


「……は?」


え?なんで?どういう心境でそんな……え?リビングに入ってきた兄貴をオレは困惑しながら凝視した。


「ただいまー、どう?染まってる?」


のんきそう聞いてくる兄貴が髪の毛を触りながら見せてくるので、オレは遠慮なくその髪の毛を引っ張った。


「いって!」

「うわっ!?マジで染めたのかよ?!」


グイッと引っ張られた兄貴がやめろ!と抗議の声を上げて軽くオレの手を叩いた。


「いきなり引っ張るな!」

「地毛だと思わなかったんだよ!」


いやなんで染めたんだよ?!とオレは勢いよく兄貴の頭を掴んで引き寄せれば、兄貴が軽くうめき声をあげる。


「こら、綾人……!」


いい加減にしろ、と言いつつも抵抗してこないのでオレはまじまじと兄貴の髪を見る。紫だった髪が真っ黒に染められ、明かりに照らされてキラキラしている。


「(なんで、よりにもよってオレと同じ黒なんだよ……!)」


兄貴の頭から手を離せば、兄貴が首に手を当てて「いてて」と声をもらす。そこに居るのは紛れもないオレの兄貴なのに、普段と違う姿でドキドキしつつ寂しいと感じてしまう。


「で、どうよ?」


ちゃんと染まってた?と聞いてくる兄貴がへらっと笑う。


「綾人とお揃いの色」

「……っ」


その言葉にオレの中で色んな感情がぐっちゃぐちゃに混ざり合って思わず叫んだ。


「に、似合ってねーよ!くそ気持ち悪い!!」


赤い顔を見られないようにオレはすぐさまその場から離れ自室に逃げ込んだ。くそ、なんだよ……!お、お揃いって……。


「バカ兄貴……!」


ドキドキとうるさい胸の音に、オレはその場にへたり込んだ。


(END)-

母親「お兄ちゃんが黒髪に染めてて思わず写真撮っちゃったの」

綾人「……友達に見せたいから送って」

 

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ねこみゃと真山

「先生、いつもと違うお仕事しませんか?」


そう言ってきたのは僕の編集者だ。いつもと違うお仕事?なにそれ?と聞いてみれば編集者が一枚の紙を取り出した。


「とあるグッズのキャラクターを様々な絵師が描いて売り出すというコラボでして…、どうでしょう先生?」


編集者から紙を受け取って軽く目を通せば、描いたイラストはグッズの外箱に印刷されるらしく、ゲームセンターの景品になるとのこと。


「ふーん、面白そうだけど…一般向けの物だよね?」

「そうですね」


BL漫画家としてはジャンルが違う世界のモノだ。あまり気乗りはしないし、今すぐに描きたい漫画もあるので今回は断ることにしよう。


「今回は断って…ん?」

「どうしました?」


受け取った紙をじっくりと見ていれば、僕は大変なことに気が付いた。


「……この仕事、受けるよ」

「おぉ、そうですか!では後ほどメールしますね!」


それでは失礼します、と言って編集者は家を出ていく。そして僕はすぐさま恋人に電話をした。


「ねぇねぇ、___くん?___くんとっておきの愛猫の写真が見たいんだけどー」


そう話せば___くんは水を得た魚の如く、少し嬉しそうな声で「今すぐそっちに行く」と言って電話を切ってしまう。そして数十分後に僕の家にやって来た___くんから愛猫ミーコの写真を熱い解説と共に見せてもらい、後日、僕は___くんの熱いプレゼンを参考にキュートなねこみゃのイラストを描いた。


(END)-

真山「というわけでサンプルで貰ったやつあげるー」

主人公「うおおおおおお?!ねこみゃがマジでミーちゃん…!?み、み、ミーちゃんがグッズになったぁああああ!!!」

 

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