抜け出せない主人公・康二編

 ある日、康二の家に泊まり、次の日は二人揃って授業が午後からだったので、俺たちは夜遅くまで映画鑑賞なんかをして過ごした。

 

「ん〜! 今は……十時か」

 

 その次の日の朝。俺は狭いベッドの中であくびをしつつ腕を伸ばして脱力する。腹が減ったな、ご飯にするかとベッドから起き上がり、ベッドに腰掛ける体勢でまだ寝ている康二の体を軽く叩いた。

 

「康二、朝だぞ」

 

 起きて朝ごはんにしよう、と言えば眠そうな声で、眠そうな顔してのそっと体を起こした。

 

「おはよう」
「んー……」

 

 ……まだ眠いのだろう、ほぼ意識がなく目を閉じて船を漕いでいる。やれやれ、テキトーになんか作るかと立ち上がろうとして康二に抱きつかれた。

 

「___……」

 

 おはよ……と非常に小さい声で言いながら俺の背中に顔を押し付け、俺をがっちり抱きしめ、言葉とは真逆にまた寝始めた。

 

「(えぇ……)」

 

 おいおい、寝ぼけてるのか? いや寝るな、そんな体勢で寝ようとするな、腰を寝違えるぞお前。

 

「寝るな起きろ」

 

 康二? 康二!! と声をかけても既に夢の中のようで反応がない、反応がないのに俺をがっちり抱きしめて離さない。

 

「(びくとも……せんのだが?!)」

 

 寝ながらなんだその力は?!ええい、このまま引きずってやろうか!?

 

「ぐ、ぬぬ……」

 

 ベッドから立ち上がり、康二を引きずってやろうとしたが重くて無理だと諦めもう一度ベッドに腰掛ける。

 

「(う、動けん……)」

 

 結局、そのまま康二が起きるのを待ち、やっと目覚めた康二は腰を寝違えた。

 

(END)―
 康二「マジで腰いてぇ……」
 館「え?!康二が?!」
 主人公「(おい、なにを勘違いしている!?)」

 

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