抜け出せない主人公・椋木編

その日はいつもより早く目が覚めた。今何時だろうと思ったが、真っ暗な視界と身動きの取れない体にため息が出た。

 

「(……相変わらず抱き枕にされてる)」

 

目の前にあるのは椋木くんの胸だな、と思いながら顔を上げる。案の定、椋木くんの寝顔がそこにあった。

 

「(いや顔があるくらいしかわかんないんだけど)」

 

暗闇に目が慣れてきても椋木くんの顔の影は濃いのだ。どういう仕組みなんだ?と思うがここはBL漫画の世界なので、考えるだけ無駄な気がする。確か今日は俺が朝ご飯の当番だったはずなので、なんとか抜け出せないか挑戦してみる。

 

「んー…!」

 

しかしがっちりと抱きしめられているせいでビクともしない。いつものことではあるが、椋木くん相手にどうにも力では勝てない。

 

「(……起こすのは、気が引けるな)」

 

今が何時なのか分かってないし、早く起こしてしまって椋木くんの勉学に支障をきたすのもな、とあれやこれやと試してみるが、やはり抜け出せない。

 

「(……アラームセットしてたはずだし、二度寝するか)」

 

椋木くんの寝息を聞いてるとだんだん眠くなっきた。もういいや、寝ちゃおう。俺は諦めて目を閉じた。

 

(END)-
主人公「俺、体を鍛えようかなって思ってるんだけど…」
椋木「自ら手を下したい相手が…?」
主人公「違うからね?」

 

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